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「試合の勝敗なんてどうでもいい」元PR TIMES出身のスポーツ広報マンが語る”ファンを虜にする広報術”とは?

まず初めに、熊谷さんのご経歴と簡単な自己紹介をお願いします

現在はBeyond Global RecruitmentでCOO(最高執行責任者)を務め、スポーツ業界のPR・採用に特化したスポーツビジネス・プラットフォームHALF TIMEのローンチから携わる熊谷童夢さん。まずはこれまでのご経歴をお伺いしました。

学生時代は甲子園出場、日本生命では営業マネージャーを歴任し、その後はPR TIMESでPRプランナーとして活躍

学生時代は、小学生からずっと野球部のキャプテンをしていました。
新卒で入社した日本生命では、個人・法人営業をした後、3年目から営業マネージャーとして50~70名の営業職員 をマネジメントしていました。

その後、東証マザーズ時代のPR TIMESに転職をし、(東証一部上場を経験)企業のPRプランニングを担当していました。

プレスリリースでメディアに取り上げてもらうポイント

前職でPR TIMESで働かれていたとのことですが、プレスリリースでメディアに取り上げられるポイントはありますか?

プレスリリースは「分かりやすさ」が最重要

プレスリリースでメディアに取り上げられるポイントは大きく3つありまして
①旬なニュースであること、②社会的意義があること、③一目で分かりやすいこと(専門用語×)です。

①、②は社会的に関心があるテーマで、かつ社会的な課題を解決しているなどの意義を感じる内容であることです。

プレスリリースで最初に見られる点で考えると、タイトルやリード文ですぐに変えられるところは、③です。業界人しか分からないような専門用語(保険なら”先進医療”など)を使うのはおススメしません。子供でもお年寄りでも誰でも解読なしにすぐに分かるような言葉を使うのが大切です。

メディアの人は、膨大なプレスリリースの中から関心があるものをピックアップしています。そのため、解読するのに時間がかかるタイトルやリード文だと取り上げてもらいずらいので、シンプルにわかりやすく書くのが鉄則です。

テクニックも重要だが、根底にはメディアに対する配慮が大切

また、テクニックだけでなく、根底にメディアへの配慮があるか?という視点が大切です。

長過ぎる、専門用語多い文章はメディアは読む気にならないというのもそうですが、その他に、時間の配慮なども大切です。

一般的には火曜日〜木曜日に配信がいいと言われています。ここは広報担当者の想像力の問題で、メディアも「週明け月曜日はテンション低いだろうな」とか、「金曜日は早く帰って飲みに行きたいだろうな」のような配慮が必要です。

あとは、企業目線(=自社)のプレスリリースはメディア受けも良くないかなと。読者目線であることもポイントですかね。

プレスリリースのランキング上位にあるコンテンツには、何か共通点のようなものはあるのでしょうか?

単純にビックリする要素(意外性)、面白いネタ(話題性)がタイトルに盛り込まれていて、かつ写真が魅力的なものが上位に取り上げられやすいです。

画像についてですが、グラフとか文字の入ったサムネイル画像(プレスリリース一覧で見える最初の画像)とかは見にくく、見てもらいづらいです。ただでさえ小さいサムネイル画像にグラフや文字が書かれていても読めないので。 。

あとは、「株式会社〇〇が~~」のようにタイトルに企業名はいらないですね。タイトルの下に配信先の企業名は書いてありますし、企業名を入れることでタイトルが長くなりすぎてしまい見づらいです。

PR TIMESの場合は、プレスリリースランキングで上位にあるプレスリリースは多くの人に見られている証です。「何が良かったのか?」の参考になるので是非チェックしてみてください。

(参考)熊谷さんが面白いと思ったプレスリリースの事例

熊谷さんが面白いと思ったプレスリリースは、大分県別府市の『温泉につかりながらジェットコースターに乗れる!?〜「遊園地」ならぬ「湯~園地」計画を別府市長が発表!』。

温泉につかりながらジェットコースターに乗れる!?〜「遊園地」ならぬ「湯~園地」計画を別府市長が発表!

タイトルには、「温泉×ジェットコースター」というビックリする要素(意外性)と、「湯~園地」というダジャレによる面白いネタ(話題性)が含まれている。

ちなみに大分県別府市さんは、他にも、今年の1月に「温泉×ラグビー」のプレスリリースを出しています。ラグビーワールドカップの開催に合わせた面白いプレスリリースでした。

あの「湯〜園地」計画から2年、 別府市による新たなトライ!ラグビーと温泉の融合による世界最強のおもてなし〜別府市 「NO SIDE」 プロジェクト スタート

スポーツ業界の広報とは?

現在は、どのようなお仕事をされていますか?

会社としてはグローバル企業およびベンチャー企業向けの人材紹介、採用代行サービスを提供していますが、私はメインで今年の7月に立ち上げたスポーツビジネス・プラットフォーム「HALF TIME」の運営に従事しています。

具体的には、スポーツ業界に特化した、採用支援やPR・ブランディング・マーケティング支援、パートナーマッチングやアクティベーション支援をスポーツ関連企業向けに行っています。最近ではスポーツ関連企業以外の企業との取引も増えてきていますね。

また、スポーツ業界で働きたいという個人の方のキャリア支援やスポーツビジネス情報の情報配信をWeb上で行っています。

youtubeなどでも注目の「熊谷童夢」さん|引用 ビジネスアスリートTV

スポーツチームの広報ってどんな仕事がありますか?

スポーツチームの広報には、チーム広報とコーポレート広報がある

スポーツチームの広報は大きく2つに分けられます。

ひとつは、チーム広報といって、いわゆる首脳陣や選手などチーム側に付いてコミュニケーションを担当する広報です。元選手だった方が担当することもあります。
もう一つは、コーポレート広報で、 チームの社外との調整やSNS運用を含めたいわゆる ブランディングを行う広報です。

スポーツチーム広報とコーポレート広報を兼務しているチームも多いですが、比較的に日本のスポーツチームはコーポレート広報が弱いと思っています。

今後も、スポーツチームの広報強化支援をするために、「HALF TIME」でも新しい機能をどんどん作っていく予定です。

スポーツビジネスの専門メディアと、スポーツ関連の求人掲載・採用サービスを統合した、スポーツビジネス・プラットフォーム「HALF TIME(ハーフタイム)」

スポーツ業界の課題と、その解決策とは?

優秀なビジネスパーソンの不足がスポーツ業界の課題

日本のスポーツ業界の課題は優秀なビジネスパーソンの不足にあります。

例えば、年収 1,000万円クラスの優秀人材が、スポーツ業界で働くとなると、半分以下の年収で転職することになるという状況があります。年収が全てとは言いませんが、家族がいる人などは自分の思いだけで転職するという選択は取りづらい為、結果として、スポーツ業界で働くという選択を取れないというのも事実です。

企業として当たり前ですが、優秀なビジネスパーソンが集まらないと、新しいマネタイズポイントの発掘やマーケティングが上手くいかずに結果として企業の売上が上がらないという悪循環が生まれてしまいます。

日本のスポーツ業界で働きたい人を増やすためのプロモーションが重要

裏方のスタッフに焦点をあてることで、スポーツチームに仕事ととして関わることの魅力を発信したい

まずは、スポーツ業界で働きたい!と思ってもらえるように、「HALF TIME」では、表に出る選手だけでなく、裏方のスタッフを取り上げてもっと表に出るようにしていきたいと思っています。

特に日本のスポーツチームのHPを見ると監督や選手の情報は掲載されていても、スタッフの方々(広報、人事、営業など)の情報が掲載されてることなんてほぼないです。

これに私は違和感を感じていて、言い方が悪いかもしれませんが、たまたまグラウンドで試合をしているのが選手であって、スタッフの方々がいないとその試合は成り立たない。

野球で例えるならば、レギュラーだけでなくベンチやベンチ外のメンバーがいるから出場機会のある選手が気持ちよくプレーできチームが成り立っている。

学生時代まではそんなことを教わってきたのに大人になると変わるの?って思っていました。

だからこそ、「HALF TIME」ではスタッフの方々のプロフィールを掲載したり、インタビュー記事を掲載したりと、ビジネスサイドで活躍する方々を取り上げてきたいと思っています。

ちなみに海外のスポーツチーム(メジャーリーグなど)はスタッフの方々も選手と同じHPに掲載されています。だから海外ではスポーツ業界での仕事を「ドリームジョブ」呼んでおり、ステータスの高い仕事として認知されているのも分かります。

HALF TIME」を通じて、スポーツ業界で働く楽しさややりがいを伝えていきたいと思っています。

まずは副業(複業)で優秀な人材をスポーツ業界に呼び込む

とはいえ現状だと、給与水準やその他要因でスポーツ業界に関わることを断念する人が多いのも事実です。

しかし、本業としてスポーツ業界に関わりたい人はそこまで多くないですが、副業(複業)であればやりたいという人は結構たくさんいるんです。

実際、「HALF TIME」が2019年11月に実施した調査では、スポーツ業界で「今後働きたい」と回答した人々のうち、80.2%は働く・関わることに興味のあるカテゴリーとして「コンテンツホルダー(クラブ・リーグ・協会など)」を回答し、また、65.4%は「副業(複業)で働く」ことを選択肢として検討していることが分かっており、副業(複業)に対する高いニーズを確認しています。

それに伴い「HALF TIME」では「複業スポンサー営業」という形でスポーツ業界に関わる一歩目の機会を提供する取組みを開始しました。

スポーツビジネスのPR・採用プラットフォーム「HALF TIME」、スポーツ業界初「複業スポンサー営業」の募集プロジェクトを新たに開始

まずは営業職の募集から開始していますが、今後、他職種への展開も視野に入れて新しい働き方を提供し続けたいと思っています。

自分の好きなスポーツチームに副業(複業)で関われるならやってみたいと思いませんか?

是非、副業(複業)でスポーツ業界に関わりたい方はこちらをチェックしてみて下さい。

副業(複業)募集企業はこちら

スポーツ業界の広報で大切なことは?

選手ではなく、チームのファンを増やすことがゴール

個人的には、チームが勝った負けたの「試合結果」や、誰がどこに移籍したといった「選手情報」はそこまで興味を持っていません。

なぜかと言うと、極端に言えば試合結果や選手情報は、チームが積極的に発信しなくても勝手にメディアが取り上げてくれるからです。黙っていても拡散されていきます。

しかし、スポーツチームの場合は選手の影響力が大きいため、選手が移籍したらファンがチームから離れていくというケースが多くあります。スポーツの魅力と言えばそうなのかもしれませんが、だからこそ、選手に依存しない、チームのファンを増やすことが重要だと考えていて、その為には、通常、メディアが取り上げないチームの裏側のストーリーを自分たち(チーム)で発信していくことが重要だと考えています。HALF TIMEでも企業がまだ伝えきれていないストーリーを作成し発信しています。

DeNAは、球団オリジナル醸造ビールを作って野球観戦自体をエンタメ化している

例えば、横浜DeNAベイスターズは、球団オリジナル醸造ビール が話題ですが、これもチームにファンをつける工夫の一つです。

単に野球観戦をして勝った負けただけではなく、試合を見ながら過ごした時間や空間までもエンタメとして楽しんでもらうことで、ビール目当てで来場するファンも増えているといいます。

球団オリジナル醸造ビール | 横浜DeNAベイスターズ

楽天は、イベントやグッズプレゼントを通じて、ファンとの関係性を構築している

また、東北楽天ゴールデンイーグルスはファンクラブメンバーに対して、「ファン感謝祭」を定期的に開催したり、イーグルスキャップやフィギアなどの「グッズプレゼント」などメンバー限定のメリットを押し出しています。個人的には「東北ろっけん活動」が好きですが、こういった活動がもっともっと表に出ていくべきだと思っています。

このように、試合結果やスター選手に頼らない、スポーツ観戦に対する付加価値や、ファンでいることのメリットを提示することでチームのファンを獲得していくことが大切です。

広報の価値や広報マンに必要なものとは?

最後に、熊谷さんに、広報の意味と、これからの広報に必要なものをお伺いしました。

広報の価値とは?

広報の価値は「PR=パブリックリレーションズ」

自分が想像もしていないステークホルダーと接点を作れる。まさにPR=パブリックリレーションズこそが、広報の価値だと思います。

広報に必要なものとは?

広報マンに必要なもは「営業力」

広報マンには幅広く営業力(社内外とのコミュニケーション、情報収集、柔軟性、忍耐力、スピード感、明るさ)が必要だと思います。プレスリリースの書き方とかは真似から入ればすぐ覚えられるので最優先事項ではないと思っています。

まとめ「チームの裏側のストーリーを語ることで”チームのファン”を作ることがスポーツ広報の極意である」

今回は、PR TIMESを経て現在スポーツ業界の広報支援を行う熊谷さんにお話を伺いました。

試合の勝敗や選手情報だけではない体験や価値の提供、チームの裏側にいるスタッフを含めたストーリーの配信が、”チームのファン”を生むということでした。

スター選手の属人性に頼らず、”チームのファン”を作る広報術は、企業やサービスの広報にも参考になるのではないでしょうか。

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