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インフルエンサーマーケティングという言葉が広義化しているなか、インフルエンサーマーケティングの本質とは?

自己紹介よろしくお願いします。

GROVEという会社の代表をやっています、北島惇起です。よろしくお願いいたします。

簡単に GROVE に至るまでの経歴をお話しすると、大学卒業→新卒社会人→お笑い芸人→ゲームパブリッシャー→GROVE という流れです。普通に新卒で就職をしたのですが、 1年半ぐらいたったころに同期に「お笑いをやろう」と誘われ、僕自身が元々お笑いが好きだったし、向こうもネタを作ってきてくれたので漫才を一緒に始めました。

そうしているとやっぱり人に見てほしくて、ネタ見せのオーディションに参加してみたり、営業トークもありますが「面白いね」と言っていただく機会も増えました。そこで本格的にお笑いをやりたいと感じ会社にも辞表を出して芸能活動を始めました。

結局相方はお笑いをやらず、僕だけがピンでお笑いをはじめることになったのですが、僕の人生のフェーズ2のような時期で、23,24歳ぐらいでした。そこからワタナベエンターテインメントさんに入り、3,4年ピンでの活動をしていました。

その後、芸人としては廃業し、芸人時代にバイトとしてやっていたゲームアプリのパブリッシャーに拾っていただき、そこの新規事業部で働き始めました。

そのなかで10個ぐらいのアプリの制作に携わったのですが、そのうちの1つをプロモーションする際に、古巣であるワタナベエンターテインメントさんに掛け合ったときに「いまだったらインフルエンサーマーケにしたほうがいいよ」と指摘をいただき、そこで紹介していただいたのがGROVEでした。

そこからGROVEにジョインすることになり、色々あり僕が社長になりました。

インフルエンサーマーケティングといういわゆるデジアドみたいな領域が今回の話のメインではあると思うんですけど、プロダクションという才能をIPにし、エンターテインメントでマネタイズしていくみたいなところも、ゲーム会社時代に培ったマーケティングの考え方だったり、芸人時代に培った経験が今のGROVEの事業になってたりします。

タレントとインフルエンサーは何が違うのでしょうか?

前提としてインフルエンサーというワードが数年前から出てきたタイミングで言うと、テレビ以外のSNSで活躍している一般人という立ち位置でした。しかしここ最近ではタレントさんとインフルエンサーの枠組みはなくなってきたというのが実感としてあります。

インフルエンサーは文字通り影響力のある人という意味で、今までタレントとかマスメディアで活躍している人は、その影響力を可視化できていなかった訳ですが、

それに対し自分の影響力を数値化できている影響力の高い人をインフルエンサーと呼び始めました。その両者の本質にはあまり違いがなく、多くのタレントがSNSに進出しており、嵐までYouTubeチャンネルを開設する時代になってきた今だからこそ、明確に分ける必要性がそもそもないと思っています。

芸能界で活躍するタレントがYouTubeなどのプラットフォームに登場するというのは時代の流れなのでしょうか?

そうですね。今その流れがきていますね。逆にSNSで大きな影響力を持った人がマスメディアに進出していくという流れもあり、ちょっと前だと益若さんから始まり、ぺこ&りゅうちぇるさんとかもそういう流れを汲んでいますよね。

最近ではSNSをフックに芸能界に進出した方でいうとヴァンゆんチャンネルさんであったり、フワちゃんとかも最近テレビに出てる機会が増えてきています。

2020年はそこが本当にカオス状態になってくるので、GROVE所属のクリエイター、タレントにとって何が大事になってくるかはかなり意識しているところですね。きちんとしたコアファンを持っているというところがとても重要で、何をするにしてもその人を強く支持してくれるファンを持っていることが大事であると考えます。

僕自身も芸人だったので、ある芸能人さんのポジションを意識していて、当時はそのポジションに当てはまる次の若手が空いていたので、そのポジションを意識して狙っていました。

でも今考えると、その人が一線級でやってこれたのは、ファンからの支持ではなくテレビ制作側からの強い支持があったからこそなんですよね。

新しい番組を作る上で、その方は番組を成立させることに特化した方だったので一線級で活躍できたのだと思います。でもこのような立ち振る舞いはこれからの時代では難しくなっていき、今後、IPは必ずエンドユーザーに向かなきゃいけなくなってくると思います。

つまりは “制作会社 < 視聴者(ファン)”という事です。

そういった意味でも強いファンを持っていることが、大きな強みになるので当時の僕に一言アドバイスするなら「そこじゃないんだよ」というところを言ってあげたいですね(笑)

制作側でなく視聴者側に向けた動画の制作はどのように変わってくるのでしょうか?

この2つでは求められているものが明確に違うんです。

例えば前述の例でいうとテレビを作る上で、番組が回りやすいように脇役に徹するのか、自分がメインとなって番組を盛り上げる立ち位置になるかは、制作者側と視聴者側の視点で評価が分かれるんです。

詳しく何が違うか説明するとテレビ制作側と向き合った場合、まず自分という「個人」を隠して場に合わせた同期(Sync)が必要です。その番組(空気、雰囲気)の非常に微妙なニュアンスをくみ取りながら成立させる為の同期が必要になります。

それとは違い”対ファン”になると空気を読んだものではなく、その人、個人の人間性、カリスマ性が重要になってきます。

その部分で”ウソ”をついてしまうと、YouTubeで見ていたキャラと実際にあったキャラに大きく乖離が生じてしまいます。きちんとファンに求められている自分の人間性を表に発信して、それをファンに見てもらう事をSNSでは求められるので、そこが制作向けの立ち回りと、視聴者向けの立ち回りの差だと思います。

インフルエンサーの影響力は、10代・20代以外にも有効なのでしょうか?

基本的にはインフルエンサーの持つ影響力は、やっぱり若年層に対して有効ですね。そもそもSNSは若年層から浸透していきました。でも今の時代は10代・20代に限定されるような影響力ではなくなってきていて、逆に若者以外に刺さるようなYouTuberがいたり、元読者モデルの方が”カリスマママ”となり影響力を持っていたりします。

かなり幅広くなってきて、YouTuberやインフルエンサーの細分化がかなり進んでいます。去年のトレンドなんですが、いわゆる士業(弁護士など)の方々がYouTubeに参入してきました。簡単に言えばYouTube版「行列のできる法律相談所」ですね。

身近にあるケーススタディを例に出し、民法や刑法について解説して情報発信したり、税理士の方が「確定申告」や「税金」など、人々の生活に近いけれど、あまりアウトプットされてこなかった情報を発信することがトレンドにもなりました。

10代・20代はどちらかというとIPを好きになりますが、年齢が上がるにつれIPではなく情報に重点を置くようになってきますね。

インフルエンサーにマッチする商材はどういうものでしょうか?

基本的にはBtoC(コンシューマー向け)の商材がやっぱり一番多いですね。

最近では弊社もSNSの運用代行業を展開していて、Instagram、Twitter、YouTube、TikTokこの4媒体がメインとなり、その企業様の目的に合わせて効率よくSNSを運用していくという事業なのですが、その部分ですとtoB向けの商材を扱っている企業様の運用代行もやっていたりします。

その中でやはり数多く依頼を頂くのが人材ですね。人材確保がかなり厳しくなっていて、人材の価値が高騰している中で、単純に採用費を上げるだけでは、いい人材を確保することが難しい現状です。

そこで、会社の文化・企業理念をSNSを通して発信することで、企業と採用ターゲットの双方が自らの情報を公開しコミュニケーションを取り、お互いの理解を深めることができます。求職者が企業を選ぶ”新たな基準”になってくるのかなって思います。そう考えるとSNSを企業が運用するのはかなりメリットがあるなと思います。

プロモーションという意味ではないですが、企業が行うべき施策の1つであるかと思います。

インフルエンサーマーケティングとその他広告などマーケティング施策について

現状インフルエンサーという言葉が独り歩きしていて、広義化しています。元々インフルエンサーマーケティングという言葉・マーケティング手法はクチコミマーケティングから生まれています。

いわゆるタレントほど距離が離れていないけど、一般人よりは影響力の強い人が発信することで効果が得られ、信用が生まれると思っています。そこでの信用がエンゲージメント、購買につながります。

現状のインフルエンサーはタレントよりも距離が遠くなっている場合が多いので、テレビのブランド広告的な役割もYouTuberやインフルエンサーが担う場合もあります。

例えば目的がコンバージョンであれば、エンゲージメント率の高いマイクロインフルエンサーを活用するべきだし、その商品に対する熱量が高くなった人達と長く付き合っていくと、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)やROI(Return On Investment:投資収益率)がますます向上していくと思います。

仮に「いったんリーチ数を増やしたい!」というニーズがあるクライアントがいたとします。この場合、テレビCMよりも、インフルエンサーマーケティングのほうが有効だったりします。

例えばYouTubeで100万回再生されるインフルエンサーもザラにいるじゃないですか。再生回数を地上波ネットの視聴率に換算した時に、1%と変わらなくなってくるので、テレビに出向してCMを打つよりも、インフルエンサーを起用するほうが効果が得られるんじゃない?みたいな考え方もあったりします。

となると、もうインフルエンサーマーケティングでカテゴライズするのは無理なので、インフルエンサーマーケティングが広く何でもできるようになってきた分、目的に対した施策が必要になってきます。

KPIはどう設定しているのでしょうか?

様々ですが、必ず設定すようにしているKPIの1つは動画再生数です。やはり見られた数は大事ですね。また視聴維持率などもKPIまではいかなくともきちんと明確にし、分析することで効果測定&次の施策に役立てます。

そういう意味ではテレビCMよりは遥かに取得できるデータが増え、PDCAに活かせます。

ただデジタルアドに比べるとインフルエンサーマーケティングは効果測定しづらいところも正直あります。

例えばインフルエンサーに投稿してもらったものの効果ってどうやって測るの?という問いに対しては、リンクのクリック数からコンバージョンまで見ることになりますが、その投稿を見た人がその後に自分で検索して入っていった場合、追っていくことができないじゃないですか。

少なくともその投稿に対するインプレッションやタップ率、自分のフォロワーさんの年齢・性別は、テレビよりは出ますが、まだデジタルプロモーションの計測部分には追いついていないのが現状です。この辺がインフルエンサーマーケティングの課題かなってどこの企業さんも思っていると思いますね。

しかしながらインフルエンサーマーケティングは「コミュニティ化、ファン化」というところにすごく強いと思っています。例えばアプリゲームを例に上げると、まずゲームをダウンロードしてもらうという段階である程度広告運用すれば、CPI(Cost Per install:アプリをインストールしたときのコストを表す指標):800円~1500円くらいで落ち着くのかなと思いますが、その後獲得したユーザーにいかに課金してもらうかが重要になってきますよね。

そういった意味でいうとインフルエンサーという存在をコミュニティ作りのきっかけにするという流れが出てきているのかなって思います。

ちょっと前までは獲得施策としてのブーストプロモーション(AppStoreランキングをあげるためにポイントサイトなどにアフィリエイトを出し瞬間的にDL数を獲得する手法)が主流でしたが、様々な理由からプラットフォーム側がブーストプロモーションをリジェクトするようになり、その代替としてYouTuberたちを起用してきました。要はアテンション施策としてYouTuberに出稿していました。ところがこれも数年前までの有効施策であったと考えています。

なぜなら今のゲームアプリ業界の流れは、ユーザーのリテンションレートが大幅に落ちてしまっています。となると、ゲーム内外でコミュニティを作りインフルエンサーとファンたちが一緒になってそのゲームを遊んでもらう形づくりがすごく重要視されています。

例えば、ギルド系で戦うPvPものがあったときに2人のYouTuberを起用し、1か月後に勝負をさせます。その場合そのファンたちは自分が好きなYouTuberを勝たせないので、結果としてギルドの一員としてゲームをやりこみ、強くなるために課金をしてもらうことができます。

その勝負が終わった後には、ファンたちはそのゲームの楽しさやどのように遊ぶのかが分かっているので、結果的に長期的に遊んでくれるユーザーが多く出てきます。

実際にこのようなプロモーションを弊社で行った際にも、効果が良かったです。こういうやり方が新しいインフルエンサーマーケティングの手法になっていくんじゃないかと思います。

扱っているプラットフォームにはどのようなものがありますか?

YouTube、Instagram、Twitter、TikTokが中心です。

この中で一押しのプラットフォームというものはありますか?

これも目的に分けて使い分けるので特にこれが秀でているというものはありませんね。それぞれのプラットフォームの特性ごとに使い分けることが重要になってきます。

YouTubeは動画メディアであり、情報量も多いのでサービスのUXをユーザーに疑似体験させるところでいうとすごく適しています。なので新サービスやUXを重視しているサービはYouTubeを使ったりしますね。

例えばUber eatsの便利さって体験してもらわないとわからないことが多いじゃないですか。それをわかってもらうにはInstagram、Twitterだと適さない。ユーザーがある程度コンテンツに対して滞在時間を割いてくれる&画像やテキストよりも圧倒的に情報量の多いYouTube動画がベストです。YouTuberっていう被写体がサービスを実際に利用し、その感想をいわせることができるっていうのは他にはない良さだと思います。

一方で、Instagramでは、ビジュアルコミュニケーションを求められるようなものには有効かなと思います。アパレルブランドなどが該当しますよね。

またTwitterだと、YouTubeやInstagramのキャンペーンに対する補間として使うことが多いです。Twitterには他のSNSにはない強い拡散機能が備わっているので、物事を広めていくには適しています。

TikTokはこのほかの3つと違って、アプリ設計がコンテンツ軸なんですね。ほかのSNSはフォロー・フォロワーの関係性が軸になって、タイムラインが作られていくんですが、TikTokは、ユーザーが好きなもの・閲覧しそうなものをいかに自動的にレコメンドするか、に重きを置いたUIになっていて、ByteDance社さんも我々はAI Technology企業だと宣言しているので、コンテンツ軸となっているのがTikTokの大きな特徴なのかって思います。

なのでコンテンツ次第で比較的バズをおこしやすいSNSになっているので、ブランディング施策を行う場合やUGC(User Generated Contents:ユーザーの手によって制作・生成されたコンテンツ)を狙ったプロモーションの場合に有効だと思います。

TikTokはユーザーがファンになりづらい点はあるのでしょうか?

そうですね。UI設計上フォロー・フォロワーの関係性が他のSNSよりも薄いので、1・2回バズったくらいでは、そんなにフォロワーは増えない印象はあります。

インフルエンサーマーケティングに必要な予算はどのくらいなのでしょうか?

いくらかと言われれば、本当に10万円ぐらいから施策を行うことができます。

しかし、そのぐらいの値段だとあまり効果測定もできませんし、結果を得ることが難しいです。

効果が実感できるレベルになるとどのくらい費用はかかりますか?

YouTuberマーケティングでいうと、少なくとも月100万ぐらいはかけないと実感はできないですし、効果検証は難しいですね。

YouTubeの値段はある程度登録者数で値段の相場があったり、再生回数の平均値だったりで金額が決まっています。そのほかにはGood、Bad、いいねの数でエンゲージがどのくらいなのかも測れるので、そこでも値段に影響します。

あと若者商材はインフルエンサー、YouTuberマーケティングの施策が多い傾向にありますね。

インフルエンサーを起用するポイントはどのような点でしょうか?

クライアントがプロモーションで抱えている課題をいかに解決するかがゴールだと思っているので、その課題解決に適切なインフルエンサーを選出します。

フォロワーの男女構成だったり年齢層でリーチできるゾーンが決まるので、そのインフルエンサーが常日頃どういう投稿をしていて、どういう投稿にエンゲージメントが高いのかを加味して、そのインフルエンサーの投稿に対して、商品・サービスをどのように混ぜていくかというクリエイティブも含めて総合的に選出していきます。

海外で気になっているクリエイターはいらっしゃいますでしょうか?

今年(2020年)のGROVEは中国マーケットにいかに届けるかを重要視しているのですが、そういう意味でいうと中国で活躍している「松浦」さんという方を、同じ日本人としても注目しています。

松浦さんはどのような方なのでしょうか?

中国の動画投稿サイトbilibili(日本でいうとニコニコ動画のようなプラットフォーム)で活躍しているインフルエンサーの方で、日本と中国の文化違いなどを投稿している方ですね。

松浦さんにうちのクリエイターとコラボしていただくと、中国の視聴者方が見てくださるのですごいありがたいですね。

今後も中国マーケット・中国で活躍するクリエイターには注目していきます。

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