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“再現できないから価値がある”ビジネスタレント・田原彩香の広報・PR術とは?

これまでのご経歴など簡単な自己紹介をお願いします 。

– 学生時代

スタートアップ向けの財務サービスを提供している『バンドオブベンチャーズ』で代表ビジネスタレントとして、運営責任者を務めております田原です、よろしくお願いします。

キャリアの面で振り返ると、大学生のときからテレビ神奈川など情報番組の女子大生レポーターをしていました。

最初は前述のテレビ番組のオーディションに受かり、番組のレポーターをやっていたのですが、そこから芸能事務所にも所属するようになり、箱根駅伝のラジオの文化放送などレポーターを中心にタレント活動の幅を広げていきました。

また学生時代は、こういった経験もあり、はじめはマスコミ業界を目指し、就職活動やインターンをしておりました。

しかし、大学生向けの就職セミナーに参加したときに、就活キャリア講師によるキャリアについての講演を聴き、就職やキャリアについてを“人に何かを伝える仕事”があることを知ったことをきっかけに人材業界に興味を持ちました。学生レポーターの活動で、人に何かを伝える仕事は少しずつ挑戦していたこともあり、さらに深めていきたいと感じたのです。

これは、学生レポーターの活動の中で気付いたことなのですが、自分に何か武器がないと、言葉に重みが出ず、きちんと伝わらない。武器として、知識を得て経験を積みたいと思い、人材業界に就職を決めました。

自分の名前だけで戦う時期が自分を成長させた

大学卒業後はマイナビに就職し、広告営業を経て、大学生向けの就活キャリア講師として講演をしたり、NHKの『人生デザインU-29』 という番組サイトにて職業についてのコラムも書くなど、充実していました。

約4年間勤めましたが、そのうちに大きな組織の中ではなく、学生時代のレポーター活動を思い出し、本格的に個で生きていきたいと思い退職し、次のステップにいくことを決めました。まだまだですが、営業と講師の業務の中で、自分の言葉で語ることのできる専門性を手に入れ、もう一度勝負がしたいと思いました。

そして、芸能事務所にもう一度所属し、司会、演技などまずは何でもやってみようという勢いで、幅広くタレント活動をはじめました。今でもアナウンサーを務めているSchoo(大人たちがずっと学び続けるオンラインコミュニティ)での活動もこの頃に始めました。

2017年からはバンドオブベンチャーズの運営責任者としてサイトやLIVE配信事業等の立上げを担い、ビジネスタレントとしての活動もはじめました。

バンドオブベンチャーズでは、スタートアップ専門財務サービスの支援をしています。また、資金調達に向けたピッチのライブ配信イベントの運営や投資家インタビューサイトの運営なども行うことでコミュニティを形成しています。

  • 財務戦略
  • ピッチのライブ配信
  • 投資家インタビューサイトの運営

スタートアップの財務戦略を考えていきます。具体的には、資金繰り相談や資金調達プラン、事業計画や資本政策の作成などです。

また、投資家インタビューサイトの『 BAND of VENTURES 』というメディアも運営をしており、投資家の方へ取材をさせていただいております。

BAND of VENTURES

最近では、スタートアップが投資家へプレゼンをするピッチのイベントをライブ配信しており、企画からキャスティング、司会まで担当しています。

BAND of VENTURES FaceBookページ

ビジネスタレントとは?

ビジネスとタレントを掛け合わせた働き方、ビジネス領域を得意とするアナウンサーのことです。

もっと本質的なことを詳しくいうと、 ビジネス領域に強みを発揮しながら、企業の外側から広報や人事の活動に携わり、企業の社外ネットワークの拡大やブランド認知を加速させていく役割として定義しています。 例えばリアルイベント・オンラインイベントの司会やモデレーターなどの活動です。企業の新規事業コンテストや採用イベント、カンファレンスなどに司会として参加させていただいております。 こういったイベントは、原稿を読むだけでは務まらず、ときにはインタビューをアドリブで行うので業界の知識も必要ですし、オンラインだと適切なコメントを拾いインタラクティブな進行も必要です。また、キャスティングや企画から携わることも多いです。

この「ビジネスタレント」という名称は私が考えました。商標登録もしており、仲間も集め、私が事務局長を務めるビジネスタレント協会を設立しました。

ビジネスタレント協会では、それぞれが得意分野を持ち、キャリアも例えば、アナウンサー、コミュニティマネージャー、ライター、企画や配信ができたりといったように掛け合わせて活躍しています。

ビジネスタレント協会
https://www.biztalent.jp

実際に『ビジネスタレント』としてこれまで活動をしてきましたが、自分の強みを表すこともでき、ブランディングにもつながります。バンドオブベンチャーズでの業務と司会業をそれぞれ分けるのではなく、『ビジネスタレント』とひとつに言い換えることで、相乗効果も感じています。

ビジネスタレントとしての相乗効果はどんな時にあるのでしょうか?

最近ですと、オンラインの司会のときです。

イベントがオンラインでの開催に移行し、主催者はノウハウがあまりない中で、進めなければなりません。

モデレーターとしての役割、視聴者とのやりとりなど、オンラインならではの気を配るポイントがいくつもあるのですが、ビジネスタレントがこのような場を仕切っていきます。

私は、バンドオブベンチャーズで、常にスタートアップの現場にいるので、起業家や投資家と日々会話することで、事業を知っていたり、本音の部分に接しています。

こういった積み重ねで、司会のときに、勘所が見えてくることが多いなあと感じています。

相乗効果としては、司会としての役割だけでなく、コミュニティマネージャーの役割を担うこともできる点も感じています。今は特に、人と人とが直接お会いできる機会が減っているので、オンラインでコミュニティを形成し、維持することが大切ですよね。

このように、今は副業が一般的になっていると思いますが、働き方が多岐にわたっているので、私が実践しているのは、バンドオブベンチャーズのの事業と司会業といったタレント事業のそれぞれをかけ合わせることによって、相乗効果を生みだしています。

単なる副業はお金は生むかもしれませんが、ノウハウがたまっていくことはないのでそれだとキャリアを積むことが難しいと思います。スキルの掛け算でクロスワークをすることで、どちらも成長できることだと思っています。これを私は、『パラレルキャリアのクロスワーク』と言っています。

どのようにスキルを掛けわせると良いのでしょうか?

そのコツなんですけど、私のフェイスブックに「貫けば武器になる」と載せてるのですが、自分の好きな分野・興味のある分野を専門分野になるまでとことん突き詰めていくと、すごくワークするんじゃないかって思っています。

突き詰める分野を見つけるのって難しいと思うのですが、自分の本当の好きなことや、これまでやってきたことで得意なことを早く見つけることが大事だと思います。

それを見つけるまでは様々なことにチャレンジすることが大事ではないかと思っています。私も会社を退職してからは、経験のないできるかどうかわからないことでも、とりあえずやってみようという思いで挑戦していました。その中で自分の好きなことを見つけて、それからは自分らしい仕事のみ取り組むようにしています。

また、1つの領域で一番になるのは、難しいと思いますが、掛け合わせることでオンリーワンの存在になることができると思っています。例えば、女優業などはレッドオーシャンであると思いますが、私はアナウンサーでもビジネス面でも1番にはなれないと思っているんです。でもその2つをかけ合わせたときに、これができる人って少ないんです。なのでそこでならオンリーワンを狙えると思っています。

またアナウンサーと一口で言っても、スポーツが得意なアナウンサーや、バラエティが得意なアナウンサーももちろんいます。

ビジネスタレントはただうまく原稿をうまく読んだりすることだけではなく、会社のことを上手くアピールすることができたり、ときにはコミュニティを運営できる人です。企業はイベントなどで露出を図ると思いますが、その目的には採用・広報など色んな目的があるなかで、そういう本質を理解して、上手くアピールできるようにしています。

いわゆるインフルエンサーとビジネスタレントは何が違うのでしょうか?

インフルエンサーはかたちのある商材をPRしているイメージがあるのですが、ビジネスタレントはかたちのない無形の商材・組織のカルチャーなど概念を企業に代わってPRしています。その点でSNSでかたちのある商品をPRするインフルエンサーとは明確に違います。

ゲストにいらっしゃった企業の代表の方の言いたいことを理解し、うまく質問をして引き出したり、視聴者の代弁となるようなコメントをしたり、します。例えば、自分の会社やサービスのことを自分自身でとてもいいですよって言いにくいと思うんです。

客観的に第三者が上手く促すことで、タレントとして前に出るのではなく、スポットをあてるところを企業というゲストにフォーカスすることで、上手く伝えられるようにしています。

ビジネスタレントの活動を通じて、サービスや組織をどのように広報・PRしているのでしょうか

私自身がそもそも広告塔になって広めてます。

もちろんプレスを打ったり、SNSも駆使しているのですが、弊社のサービス自体がtoC向けではなくて、toB向けのものなので、市場は限定しておりますし、バンドオブベンチャーズのメディアも少しずつ熱狂的なファンを作っていくことが大事だと思っています。

たくさんアクセスがあることに越したことはないのですが、それよりも1人1人に深く刺さるPRをしていくことが大事ですね。ある意味では、広報・PRしてくれるファンを自然と作っていくイメージです。

広報という仕事は、「再現性ある仕組み化が大事」という意見と「属人化させることでファンを増やすことが大事」という相反する意見もあると思うのですが、どう考えておりますか?

弊社のようなターゲットがはっきりとしているサービスでは、ある程度、広報活動は属人化することも大事だと思います。あくまでビジネスタレントという人はサービスを伝える入り口であって、サービスに熱狂的なファンを作ることが重要だと思っています。

タレントというとファンクラブというイメージがあるかと思いますが、ビジネスタレントは、あくまで無形のサービスや概念を伝えるものであるので、

そういう意味では広報にアイドルに付くようなファンはそこまで必要はないと思います。むしろビジネスタレントは広報活動において他の人には簡単に“再現できないから価値がある”と思っています。

簡単に再現できるものだと廃れてしまうので、ビジネスタレントは広報活動においてビジネスの知識やキャリアにタレント活動を掛け合わせているのでニッチな専門性という価値を生み出しているため、他の人が再現するのは難しく、差別化されています。

広報に適している人はどんな人でしょうか

適しているか適していないかというのはなく、好きなことは見つけるものではなくて、きっともうやっていることなんですよね。やりたい気持ちがある人はすでにSNSを駆使していたり、または腰を据えて頑張れる意気込みがある人。 だからこそ、やりたい人は手を挙げるのがいいと思います。

人は今までやっていないことはおそらく好きなことではないんですよね。自分の今までを振り返って、探すことが良いと思います。

1つエピソードがあります。うちの会社に優秀なエンジニアの方がいて、そのエンジニアとミーティングがあり、新入社員が「これからITは必要だから、向いている人ってどういう人なんですか?」って訊いていたんですよ。

その時に「向いてるとかじゃなくて、もうやっていますよね。向いている人は」って仰っていて、それが本質だと思いました。

昨今、人事広報・採用広報など人事採用領域と広報が密接に連携していく動きがあると思いますが、何か実践して取り組んでいることはありますか ?

バンドオブベンチャーズは、ベンチャー企業ということもあり、私は今は、人事・採用・広報・営業・企画など正直、今は自分がやれることをすべてやっているので境目はありません。

人事広報・採用広報だけでなく、営業とも密接に関わっている。 大企業はそれぞれの役割があるかもしれませんが、 特にスタートアップ・ベンチャー企業は人事・広報・営業も境目はないと思います。 会社として、その手段として人事・広報・営業という役割があるだけという考えです。

大企業はもちろん細分化していると思うのですが、スタートアップ・ベンチャー企業などはそういう境目を作らないほうがうまく回るのかなと思います。なので広報だけをやることはできないと思っています。

事業の核の部分に触れていないと、そのことがよくわからないし、トップに言われたことだけをやっていると、現場経験のない広報として薄っぺらくなってしまうと思います。

最後に広報・PRで大事なことは何でしょう?

先程の話と重複しますが、広報やPRは人気の職種なので、広報・人事だけやりたいといった憧れがある人もいるかと思いますが、広報・人事はお金を生む部門ではないですよね。そもそも会社ってお金を生み出すところだと思うので、広報・PRの業務しかやりませんではなく、会社の発展のために他のお仕事もやりますという意気込みが大切です。広報・PRをやる中で大事なところを理解していないと、当事者意識が希薄化して見せ方が薄くなってしまいますね。

また、広報の戦略・戦術レベルの話としてはペルソナの設定が大事だと思います。

「具体的に○○さんに読んでもらいたい」というところまで突き詰める必要があります。これは採用広報をするときにも似ているのですが、「こういう人に入ってきてほしい」というのを徹底的に深掘ります。

よくあるペルソナの作り方の「性別・年齢・趣味趣向」で分けることだけがでは意味がないと思っています。実際に今まではこのような抽象度の高いペルソナを作ってみたこともあるんですけど、それって具体的に誰?となってしまい、誰にも刺さらなかったですね。

「○○さんに来てほしい」といったように具体的に実在する方に向けて設定しないと、抽象的になってしまうので実在する人をイメージして突き詰めます。ある意味ラブレターみたいなものだと思っています。

これは広報の業務上の戦略・戦術の話としても大事ですが、個としてもキャリアを歩むうえで、自分で市場を作り切り拓くという点で同じだと思っています。

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